吉行淳之介『砂の上の植物群』

砂の上の植物群 (新潮文庫)

砂の上の植物群 (新潮文庫)

主人公の亡父の幻影がなんども登場するのには辟易したけれど、
(作者の思いも重なっているようだから余計に)
いつものあのけだるい空気を感じられるのが好き。
全体的には湿っぽいのに、身体が合わさる場面の描写なんかはとても乾いていて、
不思議な人だなあといつも思う…って故人だけど。
関係した姉妹を鉢合わせさせるところや、
主人公が年齢を経ていく妻を見る目なんかの残酷さには、
不思議とぞくぞくさせられる。


去年のことだけど、絶版になっていた気になっていた本が再版されて、
これもなかなか読んでよかった。

作家と写真家が互いに独立して作品世界をつくっていた。
吉行氏はヴェニスに到着すると、早速体調不良のためホテルで療養。
そのらしさが可笑しかった。
題字は田中一光氏。美しい表紙。


対談 美酒について―人はなぜ酒を語るか (新潮文庫)

対談 美酒について―人はなぜ酒を語るか (新潮文庫)

私は飲めないけど、でも面白く読めた。