『潜水服は蝶の夢を見る』
- 作者: ジャン=ドミニックボービー,河野万里子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/03/05
- メディア: 単行本
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去年から楽しみにしている映画。
関西は16日が封切りで、待ちきれなくて原作本の方を先に手に取った。
「ELLE」の編集長だったジャン=ドミニク・ボービーが突然脳溢血に倒れ、その後全身麻痺に陥ってしまってからの療養生活を綴った手記。
もちろんペンを取ることはできず、唯一動かせる左まぶたで表したいアルファベットを伝える。
そのやりとりは「アルファベット」という章に書かれているし、映画でも説明されるだろう。
そこで本人はもちろん、読み取る代筆者も途方もない根気を必要とされるのが分かる。
だから文章にも息切れしたような、とぎれとぎれのものを想像していたのに、むしろ滑らかに流れるような音楽が聴こえてくるようだった。
もちろん原文を読んでいないので、翻訳からのイメージに過ぎないのだけれど。
作者がずっと語りたくて、でもなかなか向き合えなかったのが発作を起こした当日のことだった。
それが「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」という章におさめられている。
そう、このタイトルはビートルズ。
僕はこの曲のアレンジが好きだ。特に、オーケストラ全体がクレッシェンドでのぼりつめていって、最後の一音で爆発するあの部分が。あたかも高層ビルの六十階から、ピアノが落ちたかのように。
そしてその箇所と彼の発作が重なり合うように描かれていて、ぎゅっと胸が締め付けられるようだった。
私は以前藤本由紀夫さんの講演で『A Day In the Life』についてきいていたのだけれど、
またひとつこの曲にまつわるエピソードを加えることになった。
http://d.hatena.ne.jp/whirligig/20070908/1190034545
この映画がつくられる前に、ジャン=ジャック・べネックスが『潜水服と蝶』(Assigné à résidence)というドキュメンタリーを撮っていたことを知った。
http://www.cargofilms.com/_fr/fiches/docu.php?id=15
フィルムのスクリーンショットをみるだけで、どんな映像だったのか気になってしまう。
さらに調べてみると1998年の大阪ヨーロッパ映画祭で上映されていた作品だったことが分かる。
その頃は今よりもずっとジャン=ジャック・べネックスに魅せられていたはずなのに。あの美しい青の映像に。
でも気付かなかったんだ。