『楽園への道』をやっと読了

楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

これは結構時間をかけてしまった。
まとまった時間がとれなかったし、それなりの長編というのもあるけど、
画家ゴーギャンと彼の祖母フローラ・トリスタンの物語が細切れに交互に入れ替わり連なっていたのは大きかったかもしれない。
私はそれぞれの世界に意識を没頭させてしまうと、なかなか次の世界に切り替えができなかった。
でもこの構成は素晴らしかったと思う。
一見、時代も立場も思想も異なるように思われる二人だったけれど、
やはり血筋なのか、だんだん共通する性格もちらほら見え隠れしてくる。
特に好きだった箇所は、18章「遅まきの道楽」。
ゴーギャンの到達地だったアトゥオナで、彼の自宅に友人が集まっている場面。屋外は大嵐。
彼がなぜブルジョワの生活を捨て、画家の道を選ぶことになったのか、その経緯をおだやかに語っている。
ちなみに作品全体のどこまでが事実に基づいているかというのは定かでないけれど、
この小説に関していえば、そのあたりは神経質になりたくないなあと思う。


あと訳者の田村さと子さんが解説の最後でも触れられているけれど、
作者のバルガス=リョサと思われる語り手が登場人物のゴーギャンやフローラに語りかけるところが度々あって、
そこをそのまま翻訳にも残しているところが面白かった。
この書き方はどこかで使えそう。



第3回配本は13日の予定ですね。チェコが舞台なのが楽しみ。

存在の耐えられない軽さ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-3)

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