『決壊』を読了
- 作者: 平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/06/26
- メディア: 単行本
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それでも頭のほとんどを占めていたのがこの小説で、話の展開や結末が知りたくて、一気に読み進めてしまった。
読みはじめは、平野さんの文体が熟れてきたなあとか、アートやメディアの描写・舞台となった土地の空気に実感があるなあとかなんて感想がぽつぽつと湧いてきてた。
そして次第に私個人の感覚的な記憶が呼び起こされてく。
象徴的だったのは、学生のとき、一緒に居てた人は気味が悪いとそそくさと寝てしまったそばで、じっと見続けたビデオ。『死の王』。
そのときのじとっとした私の内部。
それから「言葉がお前自身と完全に一致するように責任を持て!」って箇所には喝破された気持ちになって、「悪魔」という存在に数ヶ月前に読んだ『巨匠とマルガリータ』を重ねてみたり。
でもそこまで感じていた諸々がどうでも良くなってしまうくらい、すっかり落胆させられるラストだった。
というのは内容がつまらなかったという意味ではなくて、結局そうなってしまったんだという、やはりというか、残念な気持ちから生じるもの。
文芸誌の連載中に平野さんがブログで書かれていたのはこういうことだったんだ。
最後の行を読み終わって即座に、もう一度沢野崇の心象を中心に読み込んでみたいと思った。
読んでいる最中も彼の独白や語りにはひっかかりがあったのだけど。
それにしても読ませる小説だった。
ずっと集中力が切れない文章と書けばいいのかな。読んでいて最後まで息切れしなかった。
私の最近の読書では『静かな爆弾』とどちらかなあというぐらい納得の現代日本小説。
時代を鋭敏に描ききっているのはすごいなあと思うのだけど、そこから先に広がる平野さんの世界観もみてみたくなった。
沢野崇ら登場人物には代弁させているのだろうけど、そんな消化不良ではなくて、もっと突き進めた世界があるような気がする。
ちなみにこの本の小口が黒いことに関して、平野さんのブログに面白いことが書かれています。
http://d.hatena.ne.jp/keiichirohirano/20080628
こういう実験的な試みに触れられるのも楽しかった。
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巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)
- 作者: ミハイル・A・ブルガーコフ,水野忠夫
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