「ドミニク・ペロー大阪大学招聘教授講演会」
大阪市中央公会堂で行われた、ドミニク・ぺロー氏の講演会に行ってきました。
私個人としては今まで興味の持てない建築家でした。
OMA案が有名なフランス国立図書館コンペで一等をとっていて、
TOTO出版の『建築家たちの20代』で講演の実録を読んだなあとか、
そんな程度でしか知らなかったです。
『建築家たちの…』を読んでいると、
ドミニク氏はそつ無く20代を過ごした印象があって、
私にとっては面白味を感じられませんでした。
15分遅れで始まった講演会は、
(オペラハウスの国際コンペのためソウルから来日。
関空から駆け付けられたそうです。)
淡々とドミニク氏が自身の最近作をスライドで紹介しながら語るもので、
予定の21時より約15分早く終了しました。
全く前もって予習して来なかった私にもよく分かる内容でした。
ドミニク氏の建築に詳しい方にとってみればもの足りないものだったかもしれません。
講演会のタイトルは「Would you like to wrap it?」。
メタルファブリックで包みこむ構造が傾向にあるようでした。
以下、挙げられた建築をメモしておく。
(日本での名称が分からないものは原名のまま)
- 《EWHA WOMANS UNIVERSITY CAMPAS CENTER》(2007)
ソウルの大学キャンパス。
建築自体は地下にあり、地上のランドスケープをデザインしている。
「建物を公園で包む」というコンセプト。
大学内に公共施設や商業施設を組み込むことによって、
大学と街との関連性を持たせるねらいがある。
- 《バタフライパビリオン(TEATRE NO)》(2006)
7月23日から始まる「越後妻有アートトリエンナーレ2006」の作品のひとつ。
http://www.echigo-tsumari.jp/
4枚の屋根は蝶が羽を広げ、閉じるイメージ。
屋根の下面は鏡面仕上げになっていて、空が映り込むことによって人工的な空をつくり出す。
屋根そのものを消し去り、無重力のなにもない状態である錯覚を起こさせる。
アジアに特徴的な、半分は地上で半分は水中に建つ建築。
- 《MULTI FUNCTION SPORTS COMPLEX》(2008)
前出のバタフライパビリオンを大きくしたイメージ。
構造もほぼ同じ。
屋根の開閉によってインドア/アウトドアに対応。
屋根の面積が大変大きく、びっくり箱のようにこの屋根が開いたときが見どころ。
形状は箱の形で、メタルファブリック(金属のカーテン)で包み込むことによって、
外と内とのつながりを作っている。
- 《ピノー現代美術館設計案》
- 《ポンピドゥーセンター別館・メス設計案》
サーカスのテントのようなイメージで、
シンプルな形状の建物を、メタルファブリックをテント生地に見立てて包む。
そうした2つのエレメントで構成されることにより、
建物の外部でもなければ内部でもない、曖昧な空間がつくられる。
このコンペを勝ち取った坂茂さんの案も、
「包む」というアイデアが活かされたものだったように記憶している。
中国の民芸品店で見付けた編み笠がヒントになり、
建物を木の集成材で覆い、さらにその上にガラスファイバーをかぶせたもの。
- 《CCTV設計案》
山の一部をつくってしまうようなボリュームのある建築。
ここでのメタルファブリックはファザードとして使用され、
楯のように建物を守る機能が与えられている。
- 《PIAZZA GARIBALDI PRELIMINARY DESIGN》(2004)
イタリア・ナポリの駅前広場。
「金属の木を建てていき」、人々が交流を持ち、憩う場所として演出する。
- (メタルファブリックを舞台の大道具に)
- 《NEW MARIINSKY THEATER》(2009)
(今回の講演の中で一番の建築物のようでした。)
ロシア、サンクトペテルスブルグに予定されているオペラハウス。
オペラハウスというものは閉鎖的だが、
金のマスク(クーポール)で覆うことによって、人々が意識できる顔をつくろうとした。
また建物と金のマスクの間に空間がつくられることによって、
パブリックスペースが生まれ、オペラを観覧しない人も訪れることができる。
ここでのメタルファブリック=金のマスクは硬く、
刺繍のような、雪の結晶のような装飾性を持ち合わせている。