『文象先生のころ 毛綱モンちゃんのころ』


明日の「関西の三奇人ふたたび」の講演のために読んでおく。
渡辺豊和さんに大きな影響を与えた、山口文象氏、毛綱毅曠氏との建築に関わる思い出を綴ったもの。
巻末にRIAをよく知るメンバーの鼎談もある。


ちょうど先日の東北旅行の際に、渡辺さんの代表作《秋田市体育館》を観てきた。
http://d.hatena.ne.jp/syn_chron/20060909
そのときはあまりの奇抜さに「悪趣味!」とさえ思えたのだけれど、
この本の後半、毛綱モン太さんの建築に対する取り組みを読んでいると、
私の捉え方が浅はかだったような気もしてくる。
勿論建築は読んで理解するものではないから、ここで軌道修正するのもおかしな話なんだけど。
でも安藤忠雄さんが講演するきっかけで、
今迄避けてきたデコラティブな建築もみていこうと、思い直すことができた。


この本には取り上げられていないけれど、《石川県能登島ガラス美術館》は毛綱さんの設計だと最近知った。
http://www.city.nanao.lg.jp/glass/info02.html
今までガラスの展示目的で2回訪れたことがある。
これも個性的な造形の建築で、私が好んで観てきたものとは違っている。
でも和倉温泉から半時間程バスに乗って島への橋を渡り、
小高い丘をのぼって行き着いたところにある宇宙的な建物はごく自然にそこにあった。
2回訪れてほとんど同じ常設展示をみても飽きなかったのは、
ひとつにこの建物の空間の豊穣さというものも影響していたかもしれない。
今度は改めて建築物を主にして訪れてみたいなあと思う。


建築から離れるけれど、この本の前半「ヴェンチューリを読んだか」の章で、
渡辺さんが大学時代、小野忠弘さんから絵を習ったことが書かれている箇所がある。
小野忠弘。
先日福井の旅で訪れたギャラリー《ONOメモリアル》とつながる。
http://d.hatena.ne.jp/syn_chron/20060819
そしてこれは私が(またしても)ぼんやりしていたんだけれど、
青森県立美術館》の常設展示「青森コンプレックス」で、
まず最初の「展示室N」に縄文土器と並んでいたのも小野忠弘さんの作品だった。
青森の作品は縄文遺物に着想を得た作品ということで白と茶が基調になっていて、まさに《青森県立美術館》と同じ。
だから美術館に溶け込んでいるような感じがしていた。
それに対して福井で観た小野作品は、洗練されているとはいうものの、もっと激しさを秘めた作品が多く、
主な作品はガラクタをキャンバスに貼付けてあった。
「青森コンプレックス」の繊細なマチエールとはほど遠い感じ。同じ作家とは気付かなかった。


今夜、渡辺さんの本をきっかけにして私の見聞がつながる。こういう瞬間が好き。