みてみたかった「世界」をみてきた

現代日本の小説 (ちくまプリマー新書)

現代日本の小説 (ちくまプリマー新書)

はてなで何気なく書かれている本の感想に、無性に読みたい気持ちが起こることもしばしば。
最近のそれはid:tori810さんの「ぼくの、ぼくたちの生きている世界」というタイトルの日記だった。
すごく惹かれた箇所を引用させていただく。

尾崎真理子というひとがこれを本にして、僕がそれを読んで、

ある「世界」を見ることができたことが、なんか嬉しかった。

すっと私もその「世界」をみたい気持ちが湧き上がって、今夜読了。
俗にいう春樹・ばなな以後の日本文学の変容についてまとめられた本。
同じような設定で以前『ポスト・ムラカミの日本文学 』を読んだけれど、それよりも個人の思い入れが抑えてあって読みやすかった。
尾崎真理子さんという方が新聞記者だからなのかもしれない。

文学:ポスト・ムラカミの日本文学   カルチャー・スタディーズ

文学:ポスト・ムラカミの日本文学 カルチャー・スタディーズ


私の読書傾向は偏りがちで、一部のものを除けば、現代よりも近代だったり、文学よりも建築本が面白い時期があったりする。
だからひとつの流れとして現代の日本文学を俯瞰できたことが良かった。
そしてそれが平坦な教養本として終わらないのは、取り上げられる作家や著者自身が「文学」に対して真摯であるからだと思う。
ひたむきな姿勢が「世界」をつくっていて、読んでいる私もその「世界」に包まれるようだった。