ピピロッティ・リスト「Karakara」(原美術館)

先月に行った展覧会。
鮮明な記憶は残っていないし、作家に関して知っていることは皆無に近いのだけど、ただ私の感じたままを記しておく。


2階のラストのビデオインスタレーション「Ever is Over All」が象徴的なように、
会場全体に残酷さと可憐さが混在していて、それらが颯爽と頭の中を駆け抜けていった感じがした。
好き嫌いを挙げれば、1階の「星空の下で」「ダイヤモンドの丘の無垢な林檎の木」のゆるやかな映像のもとで佇むのが好みだし、
特に1階奥のサンルームの作品みたいに、木漏れ日のような映像と戯れるのが好きな時間。
でも私の嗜好はその範囲だけにはとどまらなくて、なまなましくて毒々しいものにも惹き付けられている。
「The Room」では巨大な大きなソファを無邪気によじ上り、壁みたいな背もたれ肘掛けに囲まれる。
子供みたいな感覚に微笑みながら、テレビのリモコンでは、血のイメージのするタイトルを選択しているのだった。


いつか口を開けて飛びかかりそうな残虐さを抱えながら、ささやかな日々を健気に生きて行く私たち。
すべてをひっくるめて自分が愛しいと思える。そんな展覧会だった。


と私は思い込んで人におすすめしたのだけれど、やっぱりいろんな感じ方があるわけで、
トイレのインスタレーションとかもあったし、控えた方が良かったのかな。
でも私自身は違和感でスクラッチされた印象が、のちのちの転機につながることがあって、
いつか観に行った方のなにかの糧になればいいなあと思う。


それにしても床板に仕込まれたモニターの穴はどうなるのだろう。
原美術館ではシャープでメモを取っていても、その芯が落ちると床が黒く傷つくからと鉛筆を持たされる。
それぐらい建物に気遣われてるのに、って館員の方に尋ねてみたら、「どうするんでしょうね」ってにっこりされてしまった。
すごく気になる。
今モニターがはめられている板の方がダミー?


(タイトルが原題と訳題でまばらなのは、私の感覚で記しているためです)