「ランジェ公爵夫人」

ランジェ公爵夫人

ランジェ公爵夫人

バルザックの新訳。
なぜ手にしたかというと、J・リヴェットが映画化したと知ったから。
関西ではシネ・ヌーヴォで5月17日から上映予定。
http://www.cetera.co.jp/Langeais/

映画も原作どおりの時代設定なんだなあ。
あの時代の貴族社会の通念を描かないと物語が成立しないかな。
でもリヴェットの現代版での解釈もみてみたかったような気がする。
どちらにしても封切りが今から楽しみ。シネ・ヌーヴォも久しぶりだ。


ランジェ公爵夫人で検索していたら、この小説とは無縁の「ランジェ城」を紹介されているページを見付けた。
http://www.rku.ac.jp/~sano/langeais.htm
こんなお城こそリヴェット監督の遊び心のある仕掛けが生まれてきそうなんだけどな。
といってもこの監督ももう80歳になる巨匠なのか。


原作の感想をまだ書いてなかった。まずあらすじを引用。

パリの華やかな舞踏会でランジェ公爵夫人は、モンリヴォー将軍と出会う。公爵夫人に激しい恋心を抱くモンリヴォー。公爵夫人は思わせぶりな振舞いで彼を翻弄し続ける。追い詰められたモンリヴォーは、たしなみや信仰を理由に拒絶する公爵夫人を、誘拐するという手段に打って出る。それを機に恋に目覚めた公爵夫人。彼女はモンリヴォーに熱烈な手紙を送りはじめるが、彼は徹底的に無視する。拒絶されたと思いこんだ公爵夫人は、失意のうちに世俗社会から離れてゆく・・・。

要するに男女の賭け引きが中心となっているのだけれど、途中本題に入る前の前置きが長い。
訳者の方もあとがきで、バルザックに馴染みのない読者には、その箇所の飛ばし読みを勧められている。
確かに貴族階級の社会的考察なんていうのは退屈なところもあるけれど、この小説が一元的な恋愛ものに終わっていない大事な骨格だなあと思う。
建築的にはP9・10にかけての修道院の描写がよかったかな。
磯崎×五十嵐の建築談議のインタビュー文が引き寄せられる。
あと唐突に思える結末も面白い。
その結末通りにつくられているとは思えないけど、以前にも映画化されているよう。

リヴェットはどんなラストを撮ったのだろう。