「美術館の可能性」

美術館の可能性

美術館の可能性


美術館運営と美術館建築、中と外からお二人の著者によって論じられた本。
関西についての記述が多いなあと思ったら、京都工繊大の先生方の著書だった。出版社も京都。


いろいろと反芻したくなるところもあったけど、今まで自分で巡ってきたところの記憶を呼び起こしながら読むのが心地よかった。
あとこの本を読んで、最近の私は建物がどうかという偏った視点から美術館をみていることを痛感する。
建物の存在しない高知の砂浜美術館や、コミュニティとアートの関係が密接な南芦屋の取り組みが興味深い。
今年開館する《国立新美術館》や《横須賀美術館》がどういう存在意義を持っていくのかも考えさせられる。


気になるのは本では一切言及されなかった《青森県立美術館》のこと。
最近のGAの座談会記事で伊東豊雄さんが、
“実際に見ると、青木さんがどういうことをしたかったのか、良く解らなかった”とおっしゃっていて、
コンペの審査員でもあった伊東氏からの発言にショックを受けてしまった。
それは変更を避けられなかった設計案や、もともと青木氏が意図したことのせいかもしれないのだけど、
その一言が建築的にだけでなく、一般的な評価にもつながっているような気にもなってくる。
青森だけのことではなく私が最近感じているのは、
一般の人が美術館に滞在できる時間と美術館で展示されるものの数が相当食い違っているのではないかということ。
青森ではなにかのツアーの中に組み込まれて来館されていた方も多かったけれど、
隣の遺跡も含めてバタバタとまわる行程には、
あの迷路のような空間の良さは邪魔なだけなんだろうな。


GA Japan―Environmental design (84(2007/1-2))

GA Japan―Environmental design (84(2007/1-2))